家は住みながら育てるもの。築4年後、当店が加えた部分とは。

前回ブログで紹介したK邸について。
どうしてもみなさんに住まい方のひとつとしてもっと紹介したくて、追記しますね。
いつもおっとり穏やかなKさん。お会いするのが本当に楽しみでした。

はじめてお会いしたとき、どんなお家なんですか?と伺った際、「素朴なおうち」と表現されたKさん。
伺ってすぐその意味がわかった。K邸は日本古来の伝統建築で建てられているのだ。
壁はすべて昔ながらの土壁、リビングには下地窓もあり、構造材や床材も杉やヒノキの無垢材をふんだんに使い、
リビングの一部は畳だし、ドアはすべて古建具。


お風呂もタイル貼りで、既製品は何一つない。
そして完全自家発電という一面もある、いろいろな意味で希少なおうちだ。
これだけ話すと日本家屋で和なイメージを抱く人がほとんどだと思う。
けれどK邸は違う。家具は日本のものイギリスのもの、国も年代もバラバラ。
畳なのにソファはなじんでいるし、掛け軸があるのに和室じゃなく、そこは寝室だったり。
独特でKさんにしかつくれない空間になっている。
そして何より居場所がいたるところにあるのが特徴。畳の上だったり、ソファだったり、ハンモックだったり、縁側だったり。
キッチンがダイニングテーブルじゃないので家族がぎゅっと集まれる感じもいい。
その雰囲気を大事にしつつ、カーテンをかえたり、ソファや収納用の家具をリメイクしたり、製作したり。


※青いカバーリングのソファ、(ねこよけでカバーがしてありますが笑)ユーズドの1人がけソファを当店でご購入。
ねこが鎮座しているキャビネットは古い食器棚の下置部分に天板を貼って、収納兼、ベンチにリメイクしたもの。
※キッチンタイルのマルチな色からカラシ色をピックアップし、カーテンの色に採用。

キッチンデットスペースには引き出しチェストを製作。
天板に使っているのはK邸にぴったり馴染んだデットストックの古いタイル。

勾配天井の斜め形状が故、片付けにくかった収納の扉を作らせていただいた。

そんな家をこつこつ育てて4年。
不便なことも、もっとこうしたいな、という思いが募ってくるころに当店に足を運んでくださったKさん。
今までの経緯、それから工事させていただいたあと、どう変わったか、Kさんに伺ってみました。
当初ソファを探されて当店をインターネットで発見していただいたとのこと。
◾️当店にソファだけじゃなく、お部屋をよりよくしたいとのことで相談していただいた理由は?
「お店に行ったとき、雰囲気やおいてあるものが好みの感じでした。また四日市という遠方だったからきてもらうのは難しいかな?と思ったけれど、お家に来て見て相談していただけるということだったので」

わたしもKさんにおお会いした時のことはよく覚えている。
家のドアがすべて古建具を使ってるということで、拝見したいなという好奇心もあった。
後日伺ったKさんの家の素晴らしさは先にふれた通りだが、実際の暮らしの上での悩みを伺っていった。
「収納がたりず、寝室は特に荷物に囲まれて寝ている」
「収納にドアがないところがあり、散らかりがち
「2Fの空間をしきり子供部屋をつくりたい」

そこでまず私がアドバイスさせていただたのは収納家具を増やすことではなく、収納方法だった。
その後伺ったらずいぶん片付いていて驚いたほど。
◾️工事を終えて、良かった点、気に入ってるとことは?
まず、荷物があふれていて、収納をつくりたいと言ったけど、仕舞い方や荷物の移動をアドバイスしてもらい、
収納をつくることを考えていたのに、収納をつくらなくてもかたずけられたこと。

そして、いまの家の素材や雰囲気にあう木材や古い建具をつかってもらったので、家に馴染み、仕上がりがとても自然でした。
また、こどもたちはそれぞれ部屋ができたことで、自分だけの時間をもてるようになりました。
※もともと仕切りのない空間を家具で仕切ってこども部屋に。家具で仕切る子供部屋の作り方の記事はこちら

この1年ちまちまかけてK邸をいっしょにそだててこられたこととても楽しかったです。

家を建てたとき大工さんに「家はすみながらつくるもの」といわれたKさん。
その言葉通り日々Kさん家族につくられてきたK邸は唯一無二の空間。
そして改めて日本本来の建築を見直すべきだなと感じるところが随所にちりばめられている。
とにかく風の通りがいい。網戸も木製で製作していて家自体に溶け込んでいる。
造作された食器棚の扉。菱形枠で職人技が光る伝統的な形状だが、色褪せないデザイン。

ステンドグラス裏からライトが当たるように配してあるのでリビング側からみるとステンドグラスが美しく灯を灯している。
構造梁も巣のままでダイナミックかつ空間に重厚感を与えている。

地盤の性質上土地の一部を掘り下げることになり生まれた地下空間が実はあるK邸。
お風呂と洗濯、洗濯干場がこの下に。下に見える引き戸は勝手口で、洗濯がすぐ干せるような動線になっている。

機能や効率ってやっぱり一番ではないと思う。
もちろんなくてはならないときもあるけれど、丁寧にくらしを楽しむにはあまり必要ないと改めて思う。

これから家づくりをするみなさまにお伝えしたいなあと感じたこと。
引っ越しまでにすべて決める必要もないし、誰かの真似を無理にしなくてもいいのでは?と。
自分と家族だけのものなのだから、住みながら育てていけばよいのだよと。
つまり過度な造作や内装も必要ないし、できたときが100%完成なんてちょっとつまらないのかな、と。
そして見た目や流行だけに左右されてはいけないよ、と。

大事な何かを思い出させてくてれるお仕事となりました。

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